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2019/10/1010/12(土)ツィメルマン室内楽プロジェクト
日本公演直前 ミラノ公演のレポートが届きました!

イタリアの音楽ジャーナリスト堂満直樹氏による、ミラノ公演(10月1日)のレポートが届きました。
チェロの岡本侑也氏が、イタリア公演で撮影した貴重な写真とともにご紹介します。


 「音楽とは"時間"であり"音"ではない」というインタビュー記事の一節をふと思い出した。3人の弦楽奏者を前にピアノに向かい今ここで演奏しているツィメルマンの言葉である。

 室内楽曲のみで構成されたコンサートは、日本ツアーに先駆けてイタリアで行われているが、ミラノでそれを聴く機会に恵まれた。

 ポーランド祝祭管弦楽団のコンサートマスターとしてマエストロとの見事な疎通を図り、ショパンという祖国の旗を掲げて世界中に感動を与えたヴァイオリンのマリシャ・ノヴァクの存在がここにも生きている。

 ブラームスとマーラーのピアノ四重奏曲が一般的なイタリアでのコンサートで取り上げられることは稀なこと。いや、何もイタリアだけと限定されたことではないのかもしれない。それは作曲家晩年の成熟を考えた場合いまだ途上にある、つまり構築度の低い作品と判断されてのことではないだろうか。

 たとえばこのブラームスの3番など他に比べると後年に手を加えられた作品でありながら着想は作曲家の若い時分にある。青年期の拘りや苦悩が凝縮されているのである。
    
 しかし市場の求めているのはなにも青く歪な造形ではなく熟練さ、そして知名度であることにも納得できる。

 ツィメルマンの紡ぐ音楽にそのような尺度は必要ない。桁違いの洞察力と探求心が聴衆にいまだ見たことのない世界を垣間見せてくれる。しかもいかにも自然なかたちで。信頼を寄せるノヴァクに自由なリズムと音色を与えて自らのピアノとの間に絶妙な距離をつくり、ヴィオラのカタジナ・ブゥドニクには骨太で色の濃い内声を、そしてメンバー中より若い岡本侑也のチェロにはツィメルマン自身、二度と戻ることのない若さを求めているような気がしてならない。

 「音楽を描きだす上で何より大切なのは最初に感じたインスピレーションであり、作曲家が創作する過程でその傍らに抱いた感情をどのように聴衆に伝えるか」が優先されると語っている。まさに伝道師の言葉である。

堂満直樹




クリスチャン・ツィメルマン 室内楽プロジェクト
2019年10月12日(土)芸術文化センター KOBELCO大ホール
公演の詳細はこちら
イタリア ペーザロ公演のポスター
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イタリア ペーザロ公演(Teatro Rossini)
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